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【大涌谷周辺(箱根山)の火山活動】

 気象庁は噴火警戒レベル1(活火山であることに留意)を発表しています。
 箱根山で観測される火山性地震の数は、数日に一回程度まで落ち着きました。また、箱根山全体が膨張するような地殻変動も終息しています。しかしながら、大涌谷から放出される火山ガスの量は、活動の活発化前に比べて、依然多い状況が続いています。温泉地学研究所では、引き続き注意深く観測を続けています。

2017年10月23日現在

2. GPSによる観測

図2-1
図2-1 マグマだまりが膨張したときの影響。地下深くにあるマグマだまりが膨張すると、火山全体が膨張するため、火山を挟む観測点の距離は拡がる。このイラストの膨張量は誇張して書いてあり、2015年の例だと、観測点間の距離がもともと10 kmあったとして、マグマだまりが膨張することによって伸びた距離は1 cm程度。
図2-2
図2-2 GPSによって観測された山体膨張。黒矢印は、観測されたGPS観測点の移動方向と移動距離を表す。箱根火山の中心から、観測点が遠ざかっているように見えるのは、中心部が膨らんでいるため。赤の×印は、観測結果を基にした計算によって推定される膨らみの中心(膨張源=マグマだまり)の位置。赤矢印は、マグマの膨張によって推定される地盤の動きを示す。ここで赤矢印は、マグマだまりが深さ7.5kmの所にあり、そこで760万立方メートル膨らんだときに予想される観測点の移動の様子が示されている。なお、青と濃い緑の棒は観測されたGPS観測点の垂直変位、薄い緑色の棒はマグマだまりの膨張によって推定されるGPS観測点の垂直変位を示す(垂直変位とは地面の上下方向の動きのこと)。
図2-3
図2-3 (上段)箱根で発生する地震積算数、(下段)箱根火山をまたぐ小田原と裾野の間の距離(GPS観測結果による)。オレンジ色に塗られた部分は、火山活動の活発化に伴う群発地震や山体膨張を示す距離の伸びが観測されている時期。緑色に塗られた部分は、東北地方太平洋沖地震によって誘発された地震活動の時期を示す。
図2-4
図2-4 (上段)複数のGPSによる距離の変化を統合解析処理した結果。点1つが、1日の観測データを示す。(下段)1日毎の地震発生数の棒グラフ。GPSの測定は誤差が大きいため、日々の測定のばらつきが大きく、変化変化の始まりを正確に捉えるのは難しいが、山体膨張を示す伸びは4月上旬から見えはじめ、地震活動が活発化した4月下旬ごろにはあきらかにばらつきの範囲を超えた伸びが見られた。7月に入ってから、膨張を示す伸びは明瞭にみられなくなってきた。

2.1. GPSで明らかになるマグマだまりの膨張

 箱根火山やその周囲にはGPSの測定点がいくつかあります。ここでいうGPSとは、基本的に車のナビゲーションで使われるものと一緒ですが、遙かに高精度で、地面に固定されています。このことにより、地殻変動で地面が動くことによる、観測点の微妙な動きを測定しています。火山は地下にマグマだまりがあります。マグマだまりには、ときどき地下深いところからマグマが供給されます。マグマの供給があると、マグマだまりはその分膨らみます。マグマだまりが膨らむ結果、火山全体も膨らみます。火山全体が膨らむと、火山を挟んだ観測点の間の距離が伸びます(図2-1)。
 温泉地学研究所でGPSのデータに注目している理由は様々ありますが、箱根火山に関しては、主としてこのようなマグマだまりの膨らみを見ているかも知れないという前提で、様々な角度から検討をしています。2015年の噴火前にも、マグマだまりの膨らみが観測されました(図2-2)。しかし、こうした観測データが得られるのは珍しいことではありません。マグマだまりの膨張現象は数年に1回程度の割合で発生しています。また、マグマだまりの膨張が起きると地震活動が活発化することも知られています(図2-3)。

2.2. 今回の火山活動でも一番はじめに動いたGPS

 温泉地学研究所のこれまでの研究で、箱根で時々起こる群発地震の少し前に、GPSでマグマだまりの膨らみとみられる現象が捉えられることがわかってきました。今回の箱根火山の噴火にいたる火山活動の活発化でも、はじめに起きたのは、GPSで山体を挟む距離が伸びる現象で、4月の初め頃に起きました(図2-4)。
 マグマだまりの膨張は7月ごろまでにかなり鈍り、その後は停止状態にあるようにみえます(図2-4)。

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