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更新日:2014年05月15日 作成者:ウェブ担当 閲覧数:9,456

2013年度日本地震学会若手学術奨励賞の受賞について

受賞理由

当研究所の行竹洋平技師は、「内陸地震の発生過程に関する研究」で、「2013年度日本地震学会若手学術奨励賞」を受賞(平成26年4月30日)しましたのでお知らせします。

公益社団法人日本地震学会は、次の理由から行竹技師の優れた業績を認め、その将来性を期待し、日本地震学会若手学術奨励賞の授賞を決定したものです。

受賞者は、稠密地震観測データの丹念な解析を通じて、内陸で発生する大地震や群発地震の震源域近傍における地殻応力や断層強度の絶対値,断層の微細構造、地殻流体と地震発生の関係に関する顕著な業績を上げてきた。その主たる業績は以下の通りである。

(1)地震のメカニズム解と大地震による応力変化を用いた絶対応力場の推定

2000年鳥取県西部地震と1983年長野県西部地震の震源域周辺に展開された稠密地震観測網データを用いて、余震のメカニズム解推定とメカニズム解を用いた応力テンソルインバージョンを行い、地震のP軸、T軸や応力の主軸の空間分布の詳細を明らかにした。さらに、本震の滑り分布から応力変化の絶対値が得られることを利用して、本震前の応力場と本震の応力変化の和と観測データから得られた応力の主軸の空間分布を比較することにより、本震前の応力の絶対値を推定することに成功した。また、長野県西部では震源域近傍に局所的な応力場の不均質を見いだし、その成因は本震による応力変化ではなく、断層深部の非地震性滑りによって本震前に生じていたことを提案した。これらの研究によって得られた知見は、内陸地震の発生過程の解明や発生予測に対する重要な貢献である。

(2)内陸地震の震源の微細構造と群発地震の発生過程に関する研究

Hi-netや温泉地学研究所の稠密地震観測網データを用いて、詳細な震源分布とメカニズム解を求め、内陸の大中地震や群発地震の発生過程に関する重要な発見と考察を行っている。特に、箱根火山においては、群発地震の震源が100m程度の厚さを持つ面状に分布し、面内で震源が拡大する様子を明らかにすることで、地殻流体が断層破砕帯内を拡散することによって群発地震が発生するモデルを提案した。また、同火山において2011年東北地方太平洋沖地震時に活発化した地震活動については、地震の震源位置、発生時刻と動的応力変化の詳細な検討から、東北沖地震の表面波により断層の法線応力の低下した時に地震が発生していることを見出し、断層帯の透水性変化に伴う流体移動が地震を誘発している可能性を指摘した。これらは、火山地熱地域の誘発地震現象に対する先駆的な研究成果である。

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