Please allow javascript.
神奈川県温泉地学研究所 >  基礎講座シリーズ  >  温泉を知ろう  >  II−3−(1) 箱根温泉
 II−3−(1) 箱根温泉

(1) 箱根温泉(箱根七湯から箱根二十湯へ)初代歌川広重の作品で「箱根七湯方角略図」(神奈川県立歴史博物館資料より)

 箱根とは箱のような外輪山の形からその名がついたとされています。箱根山は変化に富んだ火山地形と多数の特徴ある温泉をもち、首都圏から近いこともあって、毎年2000万人の観光客と450万人の宿泊客が集っています。箱根温泉は約1300年前の奈良時代に最初の温泉が見つかり、江戸時代には湯本・塔之沢・堂ケ島・宮ノ下・底倉・木賀・芦之湯のいわゆる箱根七湯の温泉場が開けていました。
 この箱根七湯は江戸時代『七湯の枝折(しおり)』として編集されて、七湯の泉質、湯宿の名称、効能など当時の湯治風景が書かれ、絵図などによって紹介されました。
 これらのうち芦之湯を除いては、いずれも早川の渓流ぞいに立地した温泉集落で、これらの温泉集落が箱根の中心地域を形成していました。
 また、江戸時代、箱根温泉の旅や湯治場が盛んになった背景には、当時の浮世絵画家である鳥居清長、歌川広重などによって描かれた浮世絵の力が大きくかかわっています。右の絵は初代歌川広重の作品で「箱根七湯方角略図」(神奈川県立歴史博物館資料より)として描かれました。


 

七湯の枝折

七 湯 

効  能

湯本 冷湯、気味なし 脚気、すぢけ、骨痛、痔疾、瘡毒、タムシ、など
塔之沢 温湯、辰砂湯、気味かろし 中風、脚気、筋痛、冷症、頭痛、打身、など
堂が島 (性質の記載なし) 痰痛、脚気、痔、頭痛、めまひ、すぢけ、など
宮ノ下 温湯、気味しほはゆし(塩けが多い)
頭痛、腰痛、脚気、しっつり、中風、疝気、など
底倉 熱湯、気味至而鹹し  痔疾、淋病、疝気、中風、打身、帯下、など
木賀 温湯、気味鹹し、又酸みあり
(上湯)気血不順、気虚、胸騒ぎ、すぢけ、など
芦之湯 冷湯、気味酸し
(達磨湯)眼丹、ただれ目、濕眼、つき目、熱、ムシ歯、など

 箱根温泉は江戸時代には湯治場として栄え、湯治は7日をひと回りとして3回り、つまり3週間を原則としていました。それが現在のように1泊2日という手軽な観光に変貌してきたのが、一夜湯治と称し、1811年(文化8)に『七湯の枝折(しおり)』という箱根温泉の案内本が発行されて以降から始まりました。
また、 『七湯の枝折』で紹介した効能は上の表のとおり述べていました。


現在の箱根温泉、箱根二十湯 
現在は湯本・塔之沢・堂ケ島・宮ノ下・底倉・木賀・芦之湯の七湯に加えて大平台・小涌谷・強羅・宮城野・二ノ平・仙石原・姥子・湯ノ花沢・蛸川・芦ノ湖を加えて「箱根十七湯」と呼んでいます。さらに早雲山、大涌谷、湖尻、を入れて「箱根二十湯」とも呼ばれている。

(2) 箱根地区の温泉の泉質

箱根地区の温泉の泉質 箱根温泉は昭和30年代から温泉地学研究所による詳細な研究が行われ、箱根地区の泉質分帯図が作成され、温泉の湧出機構や地質状況との関係が明らかにされました。その結果、箱根温泉の泉質を第I 帯〜第IV帯の4種類に区分しています。

 第I帯は酸性硫酸塩泉です。火山性蒸気の噴出する中央火口丘神山に分布する大涌谷、早雲山、硫黄山の各噴気地帯及びその周辺に浅層地下水として存在する温泉です。また、この温泉はpH2〜3を呈し、硫酸イオンの多いのが特徴です。硫酸イオンの供給源は火山ガスの主成分の硫化水素が地表近くで酸化されて生成したものです。

 第II帯は重炭酸塩硫酸塩泉です。この温泉は中央火口丘を取り巻くように分布しており、深度300〜700メートルの孔井から揚湯されてます。温度は50〜70℃です。泉質を特徴づけている重炭酸は堆積物中に取り込まれている植物の分解によって供給されていると考えられています。この温泉は中央火口丘の基底部付近に形成されている深部地下水と見なされています。

 第III帯は塩化物泉です。高温のナトリウム塩化物泉が早雲山噴気地帯の地下100メートルから出発し、3本の流れとなって東の早川渓谷方面に流下しています。湧出時の地表での温度は90℃以上、pHは7〜8.5、溶存成分の85%が塩化ナトリウム、10%が珪酸です。この温泉は典型的な火山性温泉です。

 第IV帯は塩化物重炭酸塩硫酸塩泉(混合型)です。この温泉は第II帯の深層地下水に第III帯の塩化物泉がいろいろな割合で混合した化学成分をもつもので、単に混合泉と呼んでいます。この内、早川・須雲川沿いで湧出する基盤岩の温泉がIVb帯に分類しています。
 この泉質の分帯図で重要なことは、第III帯と第IV帯の温泉が神山の東側にあって、西の芦ノ湖側に見られないことです。これは、泉質帯に見られる東西の非対称性であり、箱根温泉の成因を考える上で重要なことです。


 箱根温泉の成因 
(3) 箱根温泉の成因

 箱根火山の熱源であるマグマだまりの規模や大きさは明らかとなっていません。
 これまでの地震観測の結果からマグマだまりの上端は7〜8km以深と考えられています。マグマから分離して神山の火道を通って上昇してくる高温・高圧の水蒸気には食塩や珪酸をガス相として含んでます。この水蒸気が中央火口丘の基底部付近を西から東に流れる深層地下水(第II帯は重炭酸塩硫酸塩泉)に混入して高温の塩化物泉を作っています。

 このため、カルデラの東側だけに塩化物泉(第III帯)が湧出し、塩化物泉を混入している混合泉(第IV帯)が分布することになります。比重の重い食塩は高温高圧ならばガス相として存在できますが、上昇によって圧力が低下すると液相(温泉)にとどまってしまいます。比重の軽い硫化水素は更に上昇し、大涌谷や早雲山の噴気地帯で火山ガスとなって噴出し、第I帯の酸性硫酸塩泉を形成しています。

プリンタ用画面
前
II−2 火山性と非火山性温泉
カテゴリートップ
温泉を知ろう
次
II−3−(2) 箱根火山の地温分布

  • お知らせ
  • トピックス
  • 研究所紹介
  • 地震・地殻変動データ
  • 基礎講座シリーズ
  • 温泉分析依頼
  • 刊行物
  • 研究所に関する資料


温泉地学研究所は地質、地震、地下水、温泉の研究を通じて
地震火山災害の軽減や、県土の環境保全に役立つ研究を行っています。
〒250-0031 小田原市入生田586 神奈川県温泉地学研究所 TEL:0465-23-3588 FAX:0465-23-3589 top