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 III−2−(1) 温泉分析書

 

 

(1) 温泉成分等の掲示及び温泉分析書の読み方

温泉法では、「温泉を公共の浴用又は飲用に供する者は、施設内の見やすい場所に、温泉の成分、禁忌症及び入浴又は飲用上の注意を掲示しなければならない。」 と定めています。(14条第1項)

 1982(昭和57年)5月25日に環境庁通知により温泉の成分、禁忌症及び入浴または飲用上の注意の掲示事項が規定さました。温泉分析書は、掲示に必要な参考資料となるものであると位置づけられています。
 また、温泉の医治効用、適応症については、温度、化学的成分、温泉地の地勢、気候など総合作用に対する生体反応よるもの温泉の成分のみによって各温泉の効用を確定することは困難として、この掲示は都道府県知事の判断によることとされています。 

 また、環境省では2005(平成17年)5月24日から温泉法による既存の掲示項目に加え、温泉の成分に影響を与える項目[加水、加温、循環、入浴剤・消毒剤の添加の4項目]について追加して掲示することを義務づけ、温泉事業者による温泉利用者への情報提供を充実させることにしました。
 このことから、温泉施設での利用形態によって、加水(源泉温度が高いので水を加える等)、加温(入浴に適した温度を保つため加温等)、循環ろ過(温泉資源の保護と衛生管理のため循環ろ過装置を使用等)、入浴剤の添加等、理由も明記された分かりやすく掲示するようになりました。
 神奈川県では、一般に入浴(浴用)の利用許可の事務手続きが多く、掲示証の作成は温泉分析書を参考として、管轄保健所が決定しています。なお、飲用の利用許可については、更に施設等の微生物学的衛生管理等の適否を検査し、慎重に取り扱うこととしています。


入浴前に、必ず温泉分析書等をご覧ください。  

項  目

内   容

 源 泉 名

 利用源泉がわかる                 

 利用施設名

 施設の浴室名や利用場所がわかる       

 温泉の泉質

 温泉の含有成分で泉質名が決定される    

 温泉の泉温

 源泉および利用場所の温泉の温度       

 温泉の成分

 温泉1kg.中の含有成分               

 禁 忌 症
 (きんきしょう)

 入浴を控えたほうが良い疾患および症状

 適 応 症

 入浴により効果がある疾患および症状

 利用方法及び注意事項 

 一般的な入浴の場合と、温泉療養の場合に注意する事項

 そ の 他

 分析年月日、分析機関、禁忌症・適応症の決定年月
 日、決定者、作成者が記載されている

1) 温泉成分、適応症等の掲示


    

項  目

内   容

 加  水

 温泉に水を加えている利用している場合は理由を掲示する

 加  温

 温泉を加温して利用している場合は理由を掲示する

 循環・濾過 

 浴槽で利用していた温泉を再び浴槽等で使用する場合は理由を掲示する

 入浴剤、消毒

 温泉に入浴剤を添加し、または温泉を消毒して利用している場合は理由を掲示する

2) 温泉施設の利用形態の掲示


 (2) 温泉分析書の記載例

 下記の温泉分析書は当所で作成しているものを見本として例示しています。
 鉱泉分析法指針に例示してあるものに比べて、記載する項目数が多くなっています。これは温泉地学研究所が長年の経験や実績に基づいて必要と判断した項目を加えているからです。たとえば、動力の大きさ、種類、掘削深度、海抜標高、静水位は、井戸の状況を知るために必要だからです。また導電率、リチウムイオン、ストロンチウムイオン、アルミニウムイオン、マンガンイオン、亜鉛イオン、硝酸イオンも記載しています。特に、導電率は総溶存物質を速やかに知る上で便利であり、硝酸イオンは浅層の地下水の主要成分として比較できます。なお、茶褐色に着色しているときは有機物(COD)を追加しています。

 成分の含有量は陽イオン、陰イオン別に、試料1kg中のミリグラム数として表示しています。陽・陰イオンではミリバル及びミリバル%を示してあります。温泉水中の陽イオンのミリバル計と陰イオンのミリバル計の値はほぼ等しくなります。ミリバル%が20%以上の成分を赤字で示してあります。ここでは陽イオンはナトリウムイオンが89%、陰イオンは塩素イオンが71%、硫酸イオンが21%となり、泉質名はナトリウム−塩化物・硫酸塩泉(旧泉質名 含芒硝−弱食塩泉)となります。


申請項目

記載内容

1.申請者

 住 所    神奈川県足柄下郡箱根町○○○番地
 氏 名    株式会社○○○○ 代表取締役 ○○○○  

2.源泉名

 湯本温泉(源泉名:     )   台帳番号  湯本第○○号 

3.湧出、揚湯地

 神奈川県足柄下郡箱根町湯本字湯坂山○○番   
 神奈川県足柄下郡箱根町湯本字湯坂山○○番  

4.湧出、揚湯地における調査及び試験成績

現地試験日時 平成14年11月5日9時30分
 泉  温    45.4 ℃
 揚湯量   107. l/min
 動 力  電動機 5.5kW、
     玉木式竪型エアリフトポンプ使用
 掘削深度  227. m 
 静水位    −. m(地表面基準)
 知覚的試験   無色透明無臭  

 気 温   11.8 ℃
 湧出形態  動力揚湯 
  
 海抜標高  126. m
 水位測定日 平成 年 月 日
 pH     8.7    

5.試験室における試験成績 

 知覚的試験  無色透明無臭         
 密度      0.9987 g/cm3 
 (24.0℃)  
 蒸発残留物 1.403  g/kg
 (110℃乾燥)

 分析終了日   平成15年12月17日
 pH    8.77
 導電率   2.220×102 mS/m (25℃)

温泉分析書の記載例 

         6.試料1kg中の成分、分量及び組成                     成分総計  1.325   g/kg

陽 イ オ ン ミリグラム ミリバル ミリバル% 陰 イ オ ン ミリグラム ミリバル ミリバル%
 リチウムイオン (Li+)

0.13

0.02

0.10

 水酸化物イオン (OH-)

0.11 0.01 0.05

 ナトリウムイオン (Na+)

400

17.4

89.23

 フッ素イオン (F-)

0.52 0.03 0.16

 カリウムイオン (K+)

7.80

0.20

1.03

 塩素イオン (Cl-)

475. 13.4 71.16

 マグネシウムイオン (Mg2+)

0.19

0.02

0.10

 硫酸イオン (SO42-)

192. 4.00 21.24

 カルシウムイオン (Ca2+)

37.1

1.85

9.49

 炭酸水素イオン (HCO3-)

58.6 0.96 5.10

 ストロンチウムイオン (Sr2+)

0.01 - -

 炭酸イオン (CO32-)

2.84 0.10 0.53

 第一鉄イオン (Fe22+)

0.00 0.00 -

 硝酸イオン (NO3-)

0.00 0.18 0.96

 アルミニウムイオン (Al3+)

0.06 0.01 0.05

 メタケイ酸イオン (HSiO3-)

- 0.15 0.80

 マンガンイオン (Mn2+)

0.00 - - - - - -

 亜鉛イオン (Zn2+)

0.00 - - - - - -

 アンモニウムイオン (NH4+)

0.00 - - - - - -

 陽 イ オ ン 計

445. 19.5 100.00 - - - -
陽イオン、陰イオンの成分、量の記載例
遊 離 成 分 ミリグラム ミリモル 微 量 成 分 ミリグラム ミリモル

 メタケイ酸 (H2SiO3)

113. 1.45

 銅イオン (Cu2+)

0.00 -

 メタホウ酸  (HBO2)

17.0 0.39

 鉛イオン (Pb2+)

0.00 -

 遊離二酸化炭素 (CO2)

0.12 0.00

 カドミウムイオン(Cd2+)

0.00 -

 遊 離 成 分 計

130. 1.84

 総ヒ素 (As)総水銀 (Hg)

0.372 0.01

 微 量 成 分 計

0.37 0.01

 

遊離成分の量の記載例


項  目

内   容

 7.泉質

 ナトリウム−塩化物・硫酸塩泉
 (旧泉質名 含芒硝−弱食塩泉)  
 アルカリ性 低張性 高温泉 
 I−4−(2)参照

 8.禁忌症、適応症等

 温泉分析書別表に記載

 9.調査及び試験者

 神奈川県温泉地学研究所 技術吏員 温研次郎

10.登録分析機関の名称及び登録番号

 神奈川県温泉地学研究所、神奈川県知事登録第1号

   平成○○年○月 ○日
   神奈川県小田原市入生田586
   神奈川県温泉地学研究所長   温泉太郎

泉質の判定、禁忌症等の記載例


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