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【大涌谷周辺(箱根山)の火山活動】

 気象庁は噴火警戒レベル1(活火山であることに留意)を発表しています。
 箱根山で観測される火山性地震の数は、数日に一回程度まで落ち着きました。また、箱根山全体が膨張するような地殻変動も終息しています。しかしながら、大涌谷から放出される火山ガスの量は、活動の活発化前に比べて、依然多い状況が続いています。温泉地学研究所では、引き続き注意深く観測を続けています。

2017年10月23日現在

4. 傾斜計による観測

図4-1
図4-1 傾斜計で測定された2015年4月から7月の傾斜変動と、傾斜計のあるエリア内で発生した地震数の時間変化。地震が多発したときに、傾斜変動が大きくなるのがわかる。ただし、傾斜計には傾き以外にも、地震に揺らされることで生じる「とび」や、傾斜計の位置が動く(変位する)ことによる変化も記録されている。このため、ここに示した傾斜変動量は今後の解析で変わる可能性がある。

4.1. 地震とともに起きる傾斜変化

 3.3.では、地震活動のエリアが時間とともに動いてきたことを紹介しましたが、地震活動が活発なエリアの地下で何が起きていたのでしょうか。そのカギを握っているのが傾斜計のデータです。図4-1には、エリア毎の地震活動の時間変化と、そのエリア内に設置した傾斜変動の時間変化を示しています。エリアの名前と範囲は3.3.で示したのと同じです。これを見ると、あるエリアの地震活動が活発だったときに、エリア内の傾斜計も動いていることがわかります。傾斜計の動きとは、地面がわずかに傾いたことを示します。ここで示したマイクロラジアンという単位は、地面が1 km先で上下方向に 1 mm動いたことを示します。非常にわずかな量ですが、傾斜計の検知能力は更に高く、わずか数千分の1マイクロラジアン程度変化も測定できます。傾斜計の変化は、箱根火山が比較的浅いところ(海面の高さ前後)で膨らんでいるという変化を示しています。つまり、地震活動と同時に、山が膨らむ変化があったと言うことがわかります。また、噴火があった6月29日には大きい変化が認められました。

4.2. 浅いところが膨らむ原因は?

 地震活動と傾斜変動の観測から、地震がたくさん発生しているときに箱根火山の地下の浅いところ(海面の高さ付近)で膨らむ現象が見られることがわかりました。GPSの場合、地下の比較的深い所、だいたい深さ10kmくらいのところが膨らむことを捉えていて、これはマグマだまりのマグマの量が増えることだと考えられています(2.1.)。一方、傾斜計の場合、地下の浅いところの膨らみを捉えています。
 傾斜計のデータだけで考えると、マグマが上昇してきて、地下の浅いところの岩盤が膨らんだことも考えられます。しかし、地震はマグマの上昇を捉えているように見えません(3.2.)。箱根火山では、温泉がたくさん湧きだしていますが、この温泉のもととなっているのが熱水と呼ばれるものです。熱水は地下深くのマグマに熱せられ、高温、高圧の状態に置かれた水のことです。箱根の地震はこうした熱水が移動することによって発生すると考えられてきました。今回の噴火でも、熱水が地下の浅いところに移動することによって、地震が発生するとともに、岩盤が膨らんだと考えられます。
 噴火が起きた6月29日には特に大きな変化が傾斜計で観測されました。理由は今後詳しい解析をしなくてはいけませんが、熱水が今までよりも大量に移動をして、岩盤が膨らんだためだと考えられます。一部の熱水が地表に達して発生したのが、水蒸気噴火です。

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