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【大涌谷周辺(箱根山)の火山活動】

 気象庁は噴火警戒レベル1(活火山であることに留意)を発表しています。
 箱根山で観測される火山性地震の数は、数日に一回程度まで落ち着きました。また、箱根山全体が膨張するような地殻変動も終息しています。しかしながら、大涌谷から放出される火山ガスの量は、活動の活発化前に比べて、依然多い状況が続いています。温泉地学研究所では、引き続き注意深く観測を続けています。

2017年12月14日現在

5 大涌谷での局所的な隆起

図5-1
図5-1 大涌谷と周辺のSAR干渉画像。各画像の右上に、ペアのデータ取得日を示した。+印は噴気異常が認められた蒸気井の位置、青線は箱根ロープウェイ。7月2日までのペアでは、噴気異常が認められた蒸気井の近くに局所的な隆起がみられるが、噴火後のペア(右下の7月2日と16日のペア)では見られない。このことから、噴火前まで隆起していたが、噴火後は隆起が止まったことがわかる。ここでは南行軌道(入射角42.8°)における干渉ペアによる結果をまとめた。
図5-2
図5-2 大涌谷の局所的な隆起に関係するとみられる亀裂の一例。e亀裂と呼ばれるこの亀裂は、5月の撮影では生じていなかったが、6月2日にはじめて観察された。その後、亀裂から噴気が出るようになり、周囲に黄色い硫黄が付着するようになったことがわかる。

5.1. 局所的な隆起の発生

 宇宙研究開発機構(JAXA)が2014年に打ち上げた陸域観測衛星「だいち2号」(ALOS-2)には、合成開口レーダー(SAR)という機械が搭載されています。地球上のどこの地点の上空にも、この衛星は定期的にやってきます。観測の指令を出すと、SARは地球表面に向けて電波を発射して、跳ね返ってきた電波のデータを取得します。次の観測でも同様にデータを取得します。この間に地面に変化が生じている場合、2つのデータには、電波の波にずれが生じます(位相のずれ)。これを計算することにより2時期における地表面の変化を知ることが出来ます。2つのデータを干渉ペア、電波の波のずれを表した地図のことをSAR干渉画像と呼びます(図5-1)。図の意味を読み取るのは少し難しいのでここではスペースの都合上、説明できませんが、 国土地理院のページなどに詳しい解説があるのでご覧下さい。
 5月6日、気象庁が箱根山にレベル2を発表したことを受けて、5月7日に「だいち2号」による緊急観測が実施されました。2014年10月9日のデータと比較した結果、5月2日頃から勢いが強くなった温泉造成用の蒸気井の周囲の直径約200mの範囲が、最大で約6cm衛星視線方向に変位(隆起)していることがわかりました。その後、1〜2週間おきに実施された緊急観測では、継続的に衛星視線方向への変位(隆起)が認められ、積算して約30cmにもおよびました。 こうした隆起がなぜ起きたのかは、今後詳しい検討が必要ですが、蒸気井から出る蒸気の勢いが強くなったことと合わせて考えると、熱水の動きに関連していると考えられます。おそらく、地下では蒸気井めがけて熱水が集中し、地面が少し盛り上がったのだと考えられます。
 なお、今回はこの隆起のことを「大涌谷での局所的な隆起」と呼んでいます。局所的な隆起域では地表で小さい亀裂が生じ、成長していったのが確認できました(図5-2)。6月中頃には、亀裂の一部から噴気がはじまり周りに硫黄が付着するようになったものもありました。
図5-3
図5-3 噴火前後のペアによるSAR干渉画像と、6月29日の噴火で生じた火口と噴気孔の関係。今回の噴火の火口や噴気孔が出来たり、蒸気井が暴噴した場所が、SAR干渉画像で認められる隆起の範囲や周辺にあることがわかる。なお、この図は図5-1eを拡大して、色を少し変えたもの。

5.2. 火口・噴気孔と局所的な隆起域

 箱根火山では、6月29日に噴火が始まり、新しく火口や噴気孔が形成されました。こうした火口や噴気孔は、「だいち2号」で観測された隆起域と一致していました(図5-3)。地下の熱水の力が大きくなりすぎると、土砂を押しのけて、地上に出て来るようになります。これが水蒸気噴火です。つまり、隆起は熱水が集中することによって起きていたと考えられます。衛星による観測データを元に、水蒸気噴火が起きた場所の直前の変位を観測できたのは、今回が世界で初めてかも知れません。

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