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【大涌谷周辺(箱根山)の火山活動】

 気象庁は噴火警戒レベル1(活火山であることに留意)を発表しています。
 箱根山で観測される火山性地震の数は、数日に一回程度まで落ち着きました。また、箱根山全体が膨張するような地殻変動も終息しています。しかしながら、大涌谷から放出される火山ガスの量は、活動の活発化前に比べて、依然多い状況が続いています。温泉地学研究所では、引き続き注意深く観測を続けています。

2017年10月24日現在

6. 2015年噴火

図6-1
図6-1 暴噴する39号井(2015年5月3日9時0分撮影)
図6-2
図6-2 大涌谷駐車場近くに設置したタイムラプスカメラ(一定時間ごとに自動的に撮影するカメラ)による大涌谷の様子。目に見える噴気の量は温度や湿度、風向きによって大きく変わるので比較が難しいが、ここではほぼ1ヶ月おきに、噴気が少ないショットを選んで示した。噴気は5月末から徐々に増え始め、6月末には地表が見えにくくなった(b)。噴火時は多量の噴気が勢いよく出た(c-d)。噴火後、噴気の量は大きく減っていないように見える(e-f)。

6.1. 噴気活動の変化

 大涌谷では箱根温泉全体の約1割の温泉が蒸気と水を混ぜることにより作られています。蒸気は地下数十から数百メートルの井戸から出てきます。通常、このような蒸気に水をかけると、蒸気は勢いが急激に弱まり温泉が出来ます。しかし、熱水活動が活発化すると、水をかけても蒸気の勢いで吹き飛ばされて、蒸気をコントロールできない状態になります。これを暴噴と呼びます。 今回は、噴火前の5月3日に蒸気井のひとつ(39号井)が暴噴状態にある事が確認されました(図6-1)。前述のだいち2号の観測で明らかになった隆起の中心はこの暴噴状態の井戸にありました。暴噴した蒸気井は、その後噴気の勢いが弱まり6月はじめにはほとんど停止状態になりました。52号井は若干活発化したように見えますが、詳しくはわかりません。 噴火後は、新しく生じた火口や噴気孔、52号井から勢いよく噴気をしています(図6-2)。

6.2. 地表の噴気活発化

 5月の初旬には、活発化した蒸気井以外に大涌谷での噴気異常はありませんでした。しかし、5月の中頃以降は活発化した蒸気井の周囲100mくらいの地面からの噴気活動も活発になりました。このため、地表付近は湯気で覆われるようになり地面の様子を確認するのが難しくなりました。
図6-3
図6-3 大涌沢を流れる熱泥流(6月29日15時56分撮影)。
図6-4
図6-4 大涌谷駐車場近くに設置したタイムラプスカメラ(一定時間ごとに自動的に撮影するカメラ)が撮影した6月29日12時台〜13時台の画像。12時27分45秒頃の画像は霧で視界が悪いが(a)、12時28分45秒ごろに画面に水滴がつき始め(b)、12時37分45秒頃には画面一面に水滴がつく(c)。水滴は、その後乾いていくが水滴の部分に汚れが残っているのがわかる(d)。そうした汚れのひとつを白い点線で囲んだが、当初はその部分になにも写っていない事が確認できる。以上のことから、水滴に混じった火山灰が12時30分頃に付着したと考えられる。火山灰が雨に混じるように降っていたという現地の観察と合わせて考えると、噴火の開始は12時30分頃であったと推定される。

6.3. 噴火の確認

 地震活動は5月15日をピークとして、時々活発化しながらも数は減少していきました。6月に入ってからは地殻変動も緩やかになっていました。ところが6月29日午前7時30分過ぎから急に地震活動が活発化しました。このため、この日に予定されていた温泉供給事業者の大涌谷への立入は中止になりました。 当所に12:50ごろ電話で火山灰らしきものが降っているという通報があり現地確認をしたところ、たしかに雨に混じるような形で火山灰が降っていることが確認できました。大涌谷駐車場からは、大涌谷の谷の中でこれまでより明らかに強い噴気が見られましたが、猛烈な湯気と霧で詳しい地表の様子はわかりませんでした。我々は大涌沢を登り、噴気地帯内に火口等が出来ていないかを確認しに行きました。やはり霧で視界が悪く明確にはわかりませんでしたが、いままで蒸気井や噴気がなかったところから白い噴煙が勢いよく上がっているのが確認できました。また、湯気を上げながら泥水が谷底を勢いよく流れているのを確認しました(図6-3)。水蒸気噴火の際には火口から直接、高温の泥が流れ出すことがあり、熱泥流とよばれています。我々が目撃したのも熱泥流と判断されました。 このように29日は水蒸気噴火に類似した何らかの爆発現象が起きていると推定されましたが、火口は明確に確認できず、また火口と思われる位置が地すべりブロックにほど近いことから、地すべりによって誘発された爆発である可能性が否定できず、噴火という結論は持ち越しになりました。 翌30日午前に現地調査を再開したところ、幅7mほどの火口と、そこから猛烈な勢いで灰色の噴煙が噴き出していることと、たまに人頭大の噴石を高さ20mくらいまで飛ばしていることを確認しました。また、火口の周りには噴石や火山灰が積み重なって出来た噴石丘と呼ばれる丘が出来ていることを確認しました。また、この日には後述するように、29日に起きていた地震が、これまでにないタイプの特殊な地震であることがわかりました。こうしたことや、前日の観察結果と併せると、29日から噴火が始まったと結論できました。 その後、大涌谷に設置していたタイムラプスカメラ(一定時間ごとに自動撮影するカメラ)の映像から、噴火の開始は29日12:30頃と推定されました(図6-4)。
図6-5
図6-5 火口と噴気孔、暴噴した蒸気井の分布。赤色の丸が火口、ピンク色の三角が噴気孔、オレンジ色の丸が暴噴した蒸気井、緑色の丸が暴噴しなかった蒸気井。上が北。左側に見える建物は、ロープウェイ大涌谷駅や土産物店など。背景にGoogle Mapsの航空写真を使用した。
図6-6
図6-6 火口と噴気孔、暴噴した蒸気井の様子(2015年10月22日撮影)。この写真は噴気の影響を除くため100枚の写真から噴気が写っていないところを選んでつなぎ合わせた合成写真。

6.4. 火口・噴気口

 梅雨時にあたっていたため、噴火後も噴火の際に生じた火口や噴気孔の実態がよくわかりませんでしたが、1週間ほどして天気が回復しはじめ、大涌谷の様子がわかってきました。詳しく検討をした結果、大涌谷の直径約150mの範囲内に、火口4個、噴気孔のうち活発なものが15個確認できました(図6-5)。 今回の噴火で生じた火口や噴気孔は大きさや噴出物の種類が様々でした。噴出物は大きい噴石、火山灰、水蒸気などですが、全てを出すものがある一方で、火山灰と水蒸気を出すもの、水蒸気しか出さないものとバリエーションに富んでいました。今回は、6月29日から30日にかけて噴石丘を作ったものを火口、それ以外を噴気孔と呼ぶことにしました(図6-6)。

6.5. 噴石丘と火口の移動

 噴石丘が形成されたのは、火口・噴気孔群の南端の部分でした。火口は6月29日に15-9、30日の日中に15-6と15-5、30日の夜以降に15-1が形成されたことがわかりました。新たな火口が出来ると、それまで活発だった火口は活動をほとんどやめました(図6-7)。15-6および15-9火口の周りに出来た噴石丘は30日の朝に崩壊しました(図6-8)。
図6-7
図6-7 大涌谷駐車場近くに設置したタイムラプスカメラ(一定時間ごとに自動的に撮影するカメラ)が撮影した火口付近の画像。(a)噴火前の合成画像。(b)6月29日18時54分頃の画像。15-9火口が活動している。(c)6月30日4時40分頃の画像。引き続き15-9火口が活動している。(d) 6月30日早朝の画像。15-5および15-9火口が活動をしている。15-9火口の活動は判然としない。(e) 7月1日10時55分頃の画像。15-9火口は活動をしていない。15-1火口が活動をしているように見える。(f)7月8日全日の合成写真。15-9火口のほか15-6火口、15-5火口も活動をしていないように見える。
図6-8
図6-8 ドローンによる15-6火口付近の映像(7月15日撮影)。15-6火口付近に出来た噴石丘が崩れて流れたため、下流では浸食による溝が生じた。溝の中で、送水管が折れているのが見える(矢印)。15-5火口と15-6火口の間に噴石丘の残骸が見える。

6.6. 2015年噴火の噴出量

 2015年噴火による噴出量は、産業技術総合研究所、防災科学技術研究所、山梨県富士山科学研究所などとの共同調査により、40〜130トン程度と推定されました(遠方に飛散した量で、火口付近に堆積した量は除く)。この噴出量はきわめて少なく、火山噴火としては最小レベルといえます。

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