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更新日:2015年05月13日 作成者:ウェブ担当 閲覧数:45,582

箱根山における火山活動 【暫定解析結果 5月13日現在】

リアルタイムの地震数の変化などはこちらをご覧ください。

ここで示した内容は、研究の進展によって変更される可能性があります。

1.地震活動

地震の積算数の変化から、最近発生した比較的規模の大きい群発地震活動は大きく2種類に分けられます。一つは2008年や2009年のように、急激に地震が増えて比較的短期間で終息する場合、もう一つは2001年や2006年、2013年のように緩やかに地震数が増え、やや長い期間活動が続く場合です。今回の活動の立ち上がり方は後者に近いようですが、地震数の増え方は2001年や2013年よりもかなり速いことがわかります。なお、2011年は東北地方太平洋沖地震(M9.0)による誘発地震で、火山性の群発地震活動ではありません。

Double Difference法と呼ばれる手法を用いて震源位置を高精度で推定したところ、活動の初期には大涌谷付近のごく浅い場所に震源が集中していたことがわかりました。さらに、大涌谷直下の深さ0〜2キロ付近を震源とし、5月4日から5日にかけて発生した非常に活発な地震活動の際には、深いところから浅いところへ震源が移動していく様子が確認できました。このような活動によって岩盤中に亀裂が入り、深部からガスなどの移動が容易になったことが、蒸気井での異常な噴気の一因になった可能性もあります。 5月8日ごろからは地震活動の中心が神山から駒ヶ岳の下、深さ0〜2キロ付近に移動しました。さらに5月10日ごろからは深さ2〜4km付近での活動が多くなっています。

2.地殻変動

箱根周辺にある国土地理院のGNSS(GPSなど)データを用いて、スタッキング解析を行いました。この解析を行うことで、単基線のデータに比べて微小な基線長の変化もとらえることができます。解析結果を見ると、地震活動が活発化し始めた4月下旬ごろから、急激に基線長が伸びる変化が現れているように見えます。過去の群発地震の際にもこのような変化は観測されており、地震活動の活発化に先行して変化が出る可能性も指摘されていました。今回も同様の傾向が見えますが、詳細については今後検討していきます。
地面の傾きを測る傾斜計でも、今回の活動に関連するとみられる変化が観測されています。傾斜の変化を2001年、2013年と比較してみます。地震活動が活発になってから半月程度の間の変動量は、2001年、2013年よりも明らかに大きく、変化速度が速いことがわかります。このような傾斜変動を起こす圧力源は、大涌谷や駒ヶ岳付近の比較的浅い場所にあると考えられます。一方、GPSの解析結果は、箱根山全体が膨張するような地面の変化をしめしており、より深い場所にも圧力源があることが示唆されます(図のベクトルは、国土地理院の山梨県小渕沢を固定点とし、5/4〜5/8の平均値と3/26〜3/30の平均値との差分)。 具体的な圧力源のモデルについては、現在解析中です。
  • グラフ中の細点線はトレンド補正後の0位置を示します。
  • グラフ中の太点線は、地震活動が活発化した日を示します。
  • 矢印は、地震による傾斜のとびを示します。
  • 傾斜変動は、上向きが北・東傾斜、下向きが南・西傾斜になります。
さらに、合成開口レーダー(SAR)による観測データを用いた解析では、より局所的な地面の変動がとらえられました。2014年10月9日と2015年5月7日のデータから、大涌谷の直径100〜150mの範囲で最大約6cm程度、衛星視線方向に近づく変位(隆起)が認められました。この隆起域は、現在活発な噴気異常が認められる蒸気井の位置と概ね一致し、地下のごく浅いところで、圧力が高まっている状態を反映していると考えられます。 さらに、2015年3月1日と5月10日のデータを用いた解析では、当初認められた隆起域内の南西部分で、最大8cm程度、衛星視線方向に近づく変位が認められています。
観測データは、火山噴火予知連絡会衛星解析グループを通して、JAXAから提供され ものです。【 原初データ ©JAXA】
防災科学技術研究所が開発したSAR干渉解析ツール(RINC)を使用しました。

 

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