2007年能登半島地震の現地調査報告
カテゴリ : 地震・地殻変動に関すること
投稿者: Gaia 掲載日: 2007/4/13
2007年能登半島地震の現地調査報告。(4月9日から11日に実施) 海藻の分布から推定した海岸線の隆起量や、神奈川県との比較など。
  • 調査期間:4月9日から11日(移動日を含む)。
  • メンバー:
    棚田俊收 主任研究員
    本多亮 技師
    小田原啓 技師
2007年3月25日に発生した能登半島地震(マグニチュード6.9)は、石川県輪島市門前町を中心に多くの家屋破壊などの被害をもたらしました。神奈川県周辺においても同規模の直下型地震が発生する可能性があることから、現地調査を行いました。

調査日程と概要

図1:田鶴浜の行政福祉センターの液状化による被害
液状化被害

  • 4月9日(移動日)
    氷見漁港の液状化や、七尾市の被害地域などを視察した。七尾市は最も被害の大きかった輪島市門前町道下から南東方向に約30km離れているが、タイル張りの歩道などで液状化が見られた。また破損した屋根瓦をビニールシートで補修した民家がたびたび見られた。特に七尾市田鶴浜地区周辺では被害が大きく、倒壊した家屋も見られた。田鶴浜の行政福祉センターは液状化によりはげしい損傷を受けていた。
  • 4月10日
    志賀町富来から門前町にかけての海岸線を北上した。海岸沿いの岩盤には白色化した海藻がはりついており、これらの分布上限と通常色の海藻の分布上限の差を測ることで、海岸線の隆起量を推定した。その後門前町周辺を視察し、金沢大学の調査チームによって報告された震源断層を確認するために、菅ノ原地区に向かった。しかし、報告されたアスファルトの横ずれはすでに修復され、実際のずれについて確認することができなかった。
  • 4月11日(移動日)
    富山市内には、ビニールシートなどで屋根を覆った建物は見当たらなかった。

海岸の隆起量について

図2:一部白色化した海藻の例
一部白色化した海藻
調査地域の海岸線には、緑藻や紅藻の仲間が多く見られた。これらの海藻のうち、海水面よりも上にでているものには白色化(脱色?)現象が見られた。調査時刻(10日午前11時半ごろから12時半ごろまで)は満潮に近く、海水面がちょうど海藻が白色化する境界の付近にあり、海水面付近に生えていた海藻は上部が白色化していた(図2にその例を示す)。現地の漁業関係者に尋ねたところ、地震前にはこのような白色化現象は見られていなかったことから、なんらかの環境の変化によって海藻に変化が現れたと考えられる。ここでは、基本的には海中にあった海藻が地震後の隆起によって海面より高くなり、乾燥と水没が繰り返されたことにより白色化したと仮定する。

すでに白色化している海藻の分布上限と通常色の同じ海藻の分布上限の差を測定し、2点から3点での結果を平均して隆起量を推定した。この結果、剱地で約45cm、腰細で約30cm、鹿磯で約10cmの隆起が確認できた(図5)。推定結果は、産業技術総合研究所の調査チームによって貝殻の分布から推定された隆起量(産総研:能登半島緊急調査報告)と調和的な値となった。

剱地での海藻の変化通常色の海藻との境界図3:琴が浜での海岸隆起による海藻の白色化。ピンクの点線が白色化した海藻と通常色の海藻の分布上限を示す。
鹿磯での海藻の変化図4:鹿磯での海藻の白色化。ピンクの点線が白色化した海藻と通常色の海藻の分布上限を示す。

図5:推定された海岸隆起量。黒い星印は、気象庁による本震の震源。
推定された隆起量

今回は実質数時間の調査結果から、海岸線の隆起量を推定した。ただし、海藻の白色化と隆起量との関係を正確に推定するには、海藻の分布だけでなく白色化する条件についても正確に知る必要があり、今後専門家による調査が行われることを期待したい。

神奈川県との比較

図5:神奈川県と能登半島の比較
神奈川県と能登半島の比較
今回の地震は、震源が深さ約10km程度で規模がマグニチュード6.9である。神奈川県で同規模の地震が発生する可能性がある地域として、県西部地域が考えられる。特に小田原では、歴史的にM7クラスの地震にたびたび襲われた記録が残っている。

そこで、能登半島と神奈川県の大きさを比較して、今回の地震で被害を受けた地域が神奈川県であればどのくらいの範囲にあたるか推定してみる。右の図が両地域を同じ縮尺で重ねたものである(能登半島が横向きになっていることに注意)。点線の四角と星印がそれぞれ今回の地震の推定震源断層と震源を示す。

県西部地域を震源と仮定すると、液状化が見られた七尾市や氷見漁港は県中部から東部にあたる。七尾や氷見では本震の際に震度5が観測されており(気象庁:震度分布図)、神奈川県ではほぼ県内全域で震度5程度の揺れを感じる可能性がある。

4月16日から21日の科学技術週間の施設公開に併せて、現地調査の報告をまとめたポスターを展示いたします。また5月30日の成果発表会(一般向け)でも報告する予定です。