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更新日:2020年05月22日 作成者:ウェブ管理者 閲覧数:5,553

III−2-(1). 温泉分析書

(1) 温泉成分等の掲示及び温泉分析書の読み方

 温泉法では、「温泉を公共の浴用又は飲用に供する者は、施設内の見やすい場所に、温泉の成分、禁忌症及び入浴又は飲用上の注意を掲示しなければならない。」 と定めています。(14条第1項)

 1982(昭和57年)5月25日に環境庁通知により温泉の成分、禁忌症及び入浴または飲用上の注意の掲示事項が規定さました。温泉分析書は、掲示に必要な参考資料となるものであると位置づけられています。
 また、温泉の医治効用、適応症については、温度、化学的成分、温泉地の地勢、気候など総合作用に対する生体反応よるもの温泉の成分のみによって各温泉の効用を確定することは困難として、この掲示は都道府県知事の判断によることとされています。 

 また、環境省では2005(平成17年)5月24日から温泉法による既存の掲示項目に加え、温泉の成分に影響を与える項目[加水、加温、循環、入浴剤・消毒剤の添加の4項目]について追加して掲示することを義務づけ、温泉事業者による温泉利用者への情報提供を充実させることにしました。
 このことから、温泉施設での利用形態によって、加水(源泉温度が高いので水を加える等)、加温(入浴に適した温度を保つため加温等)、循環ろ過(温泉資源の保護と衛生管理のため循環ろ過装置を使用等)、入浴剤の添加等、理由も明記された分かりやすく掲示するようになりました。
 神奈川県では、一般に入浴(浴用)の利用許可の事務手続きが多く、掲示証の作成は温泉分析書を参考として、管轄保健所が決定しています。なお、飲用の利用許可については、更に施設等の微生物学的衛生管理等の適否を検査し、慎重に取り扱うこととしています。

入浴前に、必ず温泉分析書等をご覧ください。 

1) 温泉成分、適応症等の掲示
項目 内容
源泉名 利用源泉がわかる
利用施設名 施設の浴室名や利用場所がわかる 
温泉の泉質 温泉の含有成分で泉質名が決定される
温泉の泉温 源泉および利用場所の温泉の温度
温泉の成分 温泉1kg.中の含有成分
禁忌症
(きんきしょう)
入浴を控えたほうが良い疾患および症状
適応症 入浴により効果がある疾患および症状
利用方法及び注意事項 一般的な入浴の場合と、温泉療養の場合に注意する事項
その他 分析年月日、分析機関、禁忌症・適応症の決定年月日、決定者、作成者が記載されている
2) 温泉施設の利用形態の掲示
項目 内容
加水 温泉に水を加えている利用している場合は理由を掲示する
加温 温泉を加温して利用している場合は理由を掲示する
循環・濾過 浴槽で利用していた温泉を再び浴槽等で使用する場合は理由を掲示する
入浴剤、消毒 温泉に入浴剤を添加し、または温泉を消毒して利用している場合は理由を掲示する

(2) 温泉分析書の記載例

 下記の温泉分析書は当所で作成しているものを見本として例示しています。
 鉱泉分析法指針に例示してあるものに比べて、記載する項目数が多くなっています。これは温泉地学研究所が長年の経験や実績に基づいて必要と判断した項目を加えているからです。たとえば、動力の大きさ、種類、掘削深度、海抜標高、静水位は、井戸の状況を知るために必要だからです。また電気伝導率、リチウムイオン、ストロンチウムイオン、アルミニウムイオン、マンガンイオン、亜鉛イオン、硝酸イオンも記載しています。特に、電気伝導率は総溶存物質を速やかに知る上で便利であり、硝酸イオンは浅層の地下水の主要成分として比較できます。なお、茶褐色に着色しているときは有機物(COD)を追加しています。
 成分の含有量は陽イオン、陰イオン別に、試料1kg中のミリグラム数として表示しています。陽・陰イオンではミリバル及びミリバル%を示してあります。温泉水中の陽イオンのミリバル計と陰イオンのミリバル計の値はほぼ等しくなります。

温泉分析書の例

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