自治体の震度計データを使って推定した2024年能登半島地震の震源過程
本トピックでは、Earth Planets, and Space誌に掲載された、自治体の震度計データを使って推定した2024年能登半島地震の震源過程に関する研究論文について紹介します。
紹介論文:
Honda, R., Aoi, S., Matsubara, M. (2025) Characteristics of the source process of the 2024 M7.6 Noto Peninsula earthquake revealed from back-projection analysis in both low- and high-frequency bands. Earth Planets Space 77, 149. https://doi.org/10.1186/s40623-025-02281-y
この論文は、長野県内に設置されている地震観測網(K-NET、KiK-net、震度観測点)のデータを使って、2024年能登半島地震の断層の壊れかた(震源過程)を調べました。研究では3本の断層(Fsw,Fc,Fne)を仮定し、低い周波数(0.05-2.Hz)と高い周波数(0.5-5.0Hz)の2つの範囲で地震波を解析しました。
低い周波数の解析では、地震の破壊は主に西方向へ広がり、震源付近と能登半島北西部で強い揺れを生み出したことが分かりました。一方、能登半島北東沖の断層では大きな地震波の励起は見られませんでしたが、やや弱い励起域が北東方向へ広がっており、今回の地震は「非対称な両側破壊」であったことを示しています。これは、地殻変動や津波のデータから推定された「すべりの大きな場所(アスペリティ)」の分布とも一致しています。
一方、高い周波数の解析では、破壊開始から10秒間はほとんど揺れが生じず、その後、破壊が両方向へ広がる様子が見られました。また、断層の傾きが変わる部分から地震波が励起されていることから、破壊が断層を乗り移るときに強い地震波を出したことが考えられます。さらに、高い周波数で強い地震波の励起が得られた場所は、低い周波数で強い地震波の励起が推定された場所の周辺に分布していました。これは、断層のすべりが止まるときに強い揺れが生じることを示唆しています。さらに、破壊が始まってから約20秒後には、能登半島北岸付近で「サブイベント」と呼ばれる小規模な破壊も確認されました。
破壊開始から10秒ほどは震源付近から地震波が放出され、25秒後くらいから、断層の北西側の浅い部分から強い地震波が出ていることが分かります。全体としては40秒程度で破壊が終了しています。
