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更新日:2017年04月11日 作成者:ウェブ担当 閲覧数:4,119

箱根強羅潜在カルデラ内に湧出する温泉の新しい分類

このトピックスは、当所の菊川主任研究員らが行った研究のうち、学術雑誌「温泉科学」第60巻(445~458 ページ、 2011年)に掲載されたものを紹介したものです。

紹介文献:
菊川城司 板寺一洋 吉田明夫、箱根強羅潜在カルデラ内に湧出する温泉の新しい分類、温泉科学、60(4), 445-458 2011

研究成果

本論文では、強羅潜在カルデラに湧出する温泉(図1参照)の2006年から2008年の調査データを用いて、温泉水に溶存する塩化物イオン(以下Cl-と標記)、硫酸イオン(以下SO42-と標記)、炭酸水素イオン(以下HCO3-と標記)の濃度と各イオンの濃度比、Cl-濃度と温度との関係、更に陰イオンと陽イオンおよび陽イオン間の関係を基に、この地域の温泉について、新しくタイプ1、タイプ 2、タイプ3、タイプ4、タイプ5、タイプ6の種類分けを提案しました。各タイプで、陰イオンと陽イオンの関係や陽イオン間の関係にも違いが見られること、温泉分布地域の特徴などから、タイプの違いは、温泉の成因の違いを反映しているものと考えられます。
以下にタイプ分けにあたって採用した分類基準を示します(図2も参照)。
  • タイプ1:Cl-濃度1000mg/ L以上かつ泉温85℃以上
  • タイプ2:Cl-の比率が60%以上かつSO42-/ HCO3-が1.5未満
  • タイプ3:Cl-の比率が30%未満かつSO42-の比率が35%以上
  • タイプ4:Cl-の比率が30%未満かつSO42-の比率が35%未満
  • タイプ5:Cl-の比率が30%以上60%未満
  • タイプ6:Cl-の比率が60%以上かつSO42-/ HCO3-が1.5以上
各タイプの温泉の分布を図3に示しました。
箱根温泉の分布と強羅潜在カルデラ構造の位置

図1 箱根温泉の分布と強羅潜在カルデラ構造の位置。赤丸が源泉の位置を示す。

タイプ1の温泉は西北西-東南東走向のゾーンに分布し、従来の箱根温泉成因モデルの第Ⅲ帯にほぼ対応していますが、塩化物イオン濃度や温度に関して、ゾーンの走向に沿った一定傾向は認められず、その分布は地下水の流動を示すものではないと考えられます。タイプ2の温泉は、タイプ1の温泉の分布ゾーンの南東端に湧出する高温塩化物泉と地下水との間の連続的な希釈関係を表していると推定されます。タイプ1, 2の間ではイオン濃度の相関関係に違いが見られることなどから、温泉を形成する希釈系は両タイプで異なっていると考えられます。

タイプ3,4,5は、従来の箱根温泉成因モデル(いわゆる大木平野モデル)において第Ⅱ帯と第Ⅳa帯に分類された温泉に相当します。第Ⅱ帯の温泉水中の炭酸水素イオンはこれまで有機物起源とされてきましたが。タイプ3や5では硫酸イオン濃度と炭酸水素イオン濃度との間に弱い相関関係が見られることなどから、炭酸水素イオンは火山ガスに由来する可能性が考えられます。本論では、陰イオン濃度の相対比から、タイプ3,4,5に区分しましたが、成因論的には、タイプ3,4,5は、火山性熱水に由来しない地下水が主体となっているという意味で共通しています。

タイプ6は、箱根火山直下のマグマからの熱水や火山性ガスとは直接関係しない基盤岩中の温泉を表していると推定されます
強羅潜在カルデラ構造の源泉の陰イオン三角ダイヤグラム

図2 強羅潜在カルデラ構造の源泉の陰イオン三角ダイヤグラム

タイプ別分布図

図3 タイプ別分布図

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