2015年箱根水蒸気噴火時に発生した連続微動に関する研究
はじめに
本トピックでは箱根特集号に掲載された、噴火時に発生した火山性微動に関する研究論文を紹介します。この研究は、行竹洋平主任研究員が筆頭著者となり、国立研究開発法人防災科学技術研究所及び東京大学地震研究所と共同で進めたものです。
箱根で初めて観測された火山性微動とそのメカニズム
火山では、「火山性微動」という地震波形が観測されることがあります。地震波の縦波と横波の立ち上がりが明瞭ではなく、比較的ゆっくりとした振動が長時間継続する現象です。火山性微動は、マグマや熱水の移動、流体で満たされた岩石中の割れ目(クラック)の振動、火道の共振、地下水の沸騰などに伴い発生すると考えられています。
箱根では過去に火山性微動は観測されてきませんでしたが、噴火の発生した2015年6月29日から7月1日にかけて、大涌谷近傍の地震観測点で観測されました。図1上段で示したのは火口近傍の大涌谷地震観測点で記録された微動波形とその周波数特性になります。1-6Hz(1Hzは1秒間に一回振動する波に対応します)の周波数帯域に火山性微動による連続的なシグナルが認められ、その特徴は図1下段で示した通常の地震波形とは異なります。火山性微動は大涌谷の近傍の観測点で主に観測され、波形の包絡線(エンベロープ)をもとに発生源を推定した結果、図2に示すように火口近傍の浅部かつ噴火直前に傾斜変動を引き起こした地下の開口割れ目の上部延長に決定されました。
さらに振幅の大きな微動が発生するときに、噴火口の形成や可聴周波数以下の空気の振動(空振)が発生したことがわかりました。空振波と微動波形を比較した結果、どちらも火口浅部を励起源とし同時に発生し、さらに空振を伴う微動と空振を伴わない微動の周波数特性がよく一致していることが分かりました。これらの結果から、その励起メカニズムの一つとして地下水の沸騰に伴い生じた微小な泡が結合した大きな気泡(スラグ)が地表付近で破裂し、そのエネルギーで微動や空振波が発生するというモデル(図3)を提案しました。
火山性微動と空振波の解析により水蒸気噴火に至った過程を地球物理的な手法でモデル化することができました。今後、同様な観測事例を増やし解析を進めることで、水蒸気噴火に至る物理過程のさらなる理解につながると思われる。また、観測された火山性微動は地表面現象と密接に関連しているため、今後このシグナルをリアルタイムで検知することにより噴火推移を迅速な把握が可能になることが期待されます。
箱根では過去に火山性微動は観測されてきませんでしたが、噴火の発生した2015年6月29日から7月1日にかけて、大涌谷近傍の地震観測点で観測されました。図1上段で示したのは火口近傍の大涌谷地震観測点で記録された微動波形とその周波数特性になります。1-6Hz(1Hzは1秒間に一回振動する波に対応します)の周波数帯域に火山性微動による連続的なシグナルが認められ、その特徴は図1下段で示した通常の地震波形とは異なります。火山性微動は大涌谷の近傍の観測点で主に観測され、波形の包絡線(エンベロープ)をもとに発生源を推定した結果、図2に示すように火口近傍の浅部かつ噴火直前に傾斜変動を引き起こした地下の開口割れ目の上部延長に決定されました。
さらに振幅の大きな微動が発生するときに、噴火口の形成や可聴周波数以下の空気の振動(空振)が発生したことがわかりました。空振波と微動波形を比較した結果、どちらも火口浅部を励起源とし同時に発生し、さらに空振を伴う微動と空振を伴わない微動の周波数特性がよく一致していることが分かりました。これらの結果から、その励起メカニズムの一つとして地下水の沸騰に伴い生じた微小な泡が結合した大きな気泡(スラグ)が地表付近で破裂し、そのエネルギーで微動や空振波が発生するというモデル(図3)を提案しました。
火山性微動と空振波の解析により水蒸気噴火に至った過程を地球物理的な手法でモデル化することができました。今後、同様な観測事例を増やし解析を進めることで、水蒸気噴火に至る物理過程のさらなる理解につながると思われる。また、観測された火山性微動は地表面現象と密接に関連しているため、今後このシグナルをリアルタイムで検知することにより噴火推移を迅速な把握が可能になることが期待されます。
謝辞
本研究では、気象庁及び防災科学技術研究所の観測点の地震波形データを使用させていただきました。東京大学地震研究所には機動観測点の設置に協力いただきました。