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更新日:2017年02月13日 作成者:ウェブ担当 閲覧数:12,381

2011年東北地震の最大余震に関する研究

このトピックスは、本多主任研究員が、原田昌武、行竹洋平、伊東博、明田川保、吉田明夫(温地研)、酒井慎一、中川茂樹、平田直、小原一成、松原誠(地震研究所)、木村尚紀(防災科研)らと共同で行った、2011年東北地方太平洋沖地震の最大余震に関する研究をまとめたものです。
 

 

研究の背景

震源域周辺の地震活動と最大余震のメカニズム解

図1
震源域周辺の地震活動と最大余震のメカニズム解(F-net CMT)を示す。青い丸は繰り返し地震のグループ(Uchida et al, 2009)、☆印は気象庁によるM6以上の地震の震源、コンターは山中(2008)による2008年5月に発生したM7の地震のすべり分布。

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の直後から、M7を超える余震が発生しました。その中でも、現在のところ最大のものが茨城県沖で本震の約30分後に発生したM7.6の地震です。この最大余震の震源域周辺では、およそ20年間隔でM7級の地震が繰り返し発生していることが知られています。そうした地震の発生には、沈み込んだ海山による固着強度の不均質が影響していると考えられていまする。また、この震源域付近はフィリピン海プレートの北端部が太平洋プレートと接触していると考えられている領域でもあり、最大余震の破壊域を明らかにすることは、この領域でのプレート関カップリングに伴う地震発生様式を理解する上で重要です。

手法と結果

最大値で規格化した放射強度分布。

図2
最大値で規格化した放射強度分布。

本研究では、首都圏に展開された首都圏中感度地震観測網(MeSO-net)のデータを用い、バックプロジェクション法によって最大余震の破壊域(強い地震波を放出した領域)を推定しました。使用したデータは、247観測点の水平動加速度記録を1回積分して得られた速度波形に0.1-1.0秒のバンドパスフィルターをかけたものです。その中のS波を含むと考えられる部分を対象として、仮定した断層面から各観測点までの走時を計算し、観測点ごとの走時差をずらしながら波形をスタックして、断層面上にその値をプロットしました。なお、走時の計算にはMatsubara and Obara (2011)による3次元速度構造を用いています。こうすることによって、強い地震波を出した領域には大きな値がプロットされ、断層面のどの場所で強い地震波を出したか(~大きく滑ったのか)を推定することができます。
解析の結果、この地震の破壊域は2008年に茨城県沖で発生したM7.0の地震のアスペリティの深部延長に位置し、2008年の地震のアスペリティとは相補的な関係となっていることが分かりました。この領域では、歴史的にM7を超えるような大地震は知られていません。また、破壊強度の分布は、Uchida et al(2009)による小繰り返し地震の震源分布とも相補的であるように見えます。

破壊域はおよそ100km四方に及ぶものの、破壊は本震時に地震波を放出したと推定される北側には進まず、南西もしくは西方向へ進展していったことが分かりました(図3)。図3に、Uhida et al., (2009)によって推定されているフィリピン海プレート(PHS)の北東限が点線で示されています。この境界より北側では、小繰り返し地震から推定されるカップリング率は0.7~0.8程度で比較的高く、南側では0.5以下と推定されています(Uchida et al., 2009)。私たちの結果からはフィリピン海プレートの北東の境界が地震波を放出した領域の南西の境界となっていることがわかります。つまりこの地震は、比較的カップリングが強い太平洋プレートと北アメリカプレートの境界で発生し、カップリングが弱い太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界までは破壊できなかったのです。
3秒ごとのスナップショット。

図3
3秒ごとのスナップショット。破壊は震源から広がり始め、破壊開始の約9秒後から21秒後までの10秒程度の間に西側の領域(down dip方向)を破壊した。破壊の伝播は、フィリピン海プレートが太平洋プレートに接する境界付近で停止している。

参考文献

  • Matsubara, M. and K. Obara, The 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake related to a strong velocity gradient with the Pacific plate, Earth Planets Space, 63, 663.667, 2011.
  • Uchida, N., J. Nakajima, A. Hasegawa, and T. Matsuzawa, What controls interplate coupling?: Evidence for abrupt change in coupling across a border between two overlying plates in the NE Japan subduction zone, Earth Planet. Sci. Lett., 283, 111.121, 2009.
  • 山中佳子, 2008 年5 月8 日茨城沖の地震( M6.4 , M7.0 ), NGY 地震学ノート,http://www.seis.nagoya-u.ac.jp/sanchu/Seismo_Note/2008/NGY7.html,2008.

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