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更新日:2018年02月02日 作成者:ウェブ担当 閲覧数:26,338

過去の関東地震の発生時期に関する研究

このトピックスは、萬年一剛主任研究員が、金幸隆(大阪市立大学;元当所特別研究員)、鈴木茂(株式会社パレオ・ラボ)、松島義章(神奈川県立生命の星・地球博物館)、太田雄貴(東京大学大気海洋研究所 兼 国立研究開発法人産業技術総合研究所)、クレア・ケイン(オーストラリア、ニューサウスウェルズ大学)、ジェイムス・ゴフ(同前 兼 フランス、ブルゴーニュ=フランシェ=コンテ大学)らと共同で行った、鎌倉・逗子地域の低地地質に基づいて、過去の関東地震の発生時期を推定した研究をまとめたものです。
 

研究の趣旨

神奈川県の鎌倉市および逗子市の海岸低地で、深さ5m前後の掘削を多数行ったところ、現在の海面付近の標高に、昔の干潟堆積物が発見されました。この干潟堆積物の年代を測定したところ、3つの時期にわかれ、それぞれが歴史記録から知られる大地震の年代に近接することが明らかになりました。

干潟の堆積物は陸と海の境界にできる柔らかい土砂でできているため、波の働きにより短い時間で入れ替わっていると考えられます。したがって、古い干潟堆積物が保存されているのは、一旦隆起して海の影響から離れたためと考えられます。この考えが正しいとすると、3つの時期は、隆起を起こすような地震、つまり相模湾を震源とする関東地震が発生した時期と推定できます。
鎌倉・逗子地域の年代一覧
図1
本研究で得られた鎌倉・逗子地域の年代一覧。横軸に年代(西暦)を示す。色がついた山の高さは、その年代である確率の高さを示す。縦の点線は歴史地震の年代を示す。サンプルの年代は一様に分布しているのではなく、歴史地震の年代に集中していることがわかる。
関東地震とは、相模トラフで繰り返し発生するマグニチュード8クラスの巨大地震です。地殻変動に関する様々な研究から約180年から400年ごとに繰り返してきたと考えられていますが、歴史上、関東地震であることが確定しているのは1923年大正関東地震(大正関東大震災の地震)と1703年元禄関東地震だけでした。今回の干潟堆積物の年代と歴史記録を照らし合わせて検討したところ、干潟堆積物が記録した3回の隆起に関係する地震は、1703年元禄関東地震、13世紀の地震(1257年正嘉地震または1293年正応地震)、878年元慶地震と推定されました。一方で、最近になって関東地震ではないかという説が出ていた1495年明応地震に対応する隆起は認められませんでした。

相模湾岸では、関東地震で隆起しても、地震と地震の間に沈降するので、海岸段丘など、隆起を記録する地形があまり残っていません。この研究は、このような条件の地域でも、海岸低地で大量のサンプリングを行うことで、隆起の記録が見つかる可能性があることを示しました。

一方で、鎌倉市や逗子市は非常に長期で見ると隆起をしており、今回の調査では、6000年間に約4mほど隆起していることがわかりました。過去1000年間では隆起していないのに、さらに長期的には隆起していることから、隆起を起こすような未知の地震が、1000年以上前に発生していた可能性が示唆されました。

なお、本研究の成果は平成23年から26年にかけて実施された津波調査事業の結果の一部です。

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