地下水位に検知されたチリ地震の地震動および津波
日本時間の平成22年2月27日15時34分ごろ、南米チリ西部で巨大地震が発生しました。USGS(アメリカ地質調査所)によれば震源の位置は震源の位置は南緯35.846°、西経72.719°、深さ35km、地震の規模を示すマグニチュードは8.8とされています。
この地震により津波が発生し、日本の太平洋沿岸地域を中心に大津波警報や津波警報が発表されました。実際に、地震発生から20数時間後に到達した津波および、その後続波により、各地で浸水や漁業施設の損壊などの被害が発生しました。
神奈川県沿岸では、この津波による被害の報告はありませんが、0.2〜0.4mの潮位の変動が観測されています(3月1日神奈川県記者発表資料)。温泉地学研究所が地震・地殻変動観測の一環で観測を行っている地下水位にも、今回の地震および津波の影響が観測されましたので紹介します。
チリ地震の影響が観測されたのは、地図に示した小田原、南足柄、真鶴、二宮の各観測点です。これらの観測点では、地震発生から約1〜2時間後に、数cmから数mm程度の振幅で地下水位が上下動している様子が認められます。この図では分かりにくいのですが、いったんその上下動が収まってから4〜5時間後にも、さらに小さい振幅で、再び地下水位が上下動していました。こうした地下水の上下動は、地震により発生し、地球を周回した表面波の影響を受けたものと考えられます。同様の変化は、平成16年12月のスマトラ島西方沖の地震(M9.0)の後にも観測されています。
一方、真鶴と小田原の観測点では、地震発生後およそ22時間後から、1〜2時間程度の周期で地下水が上下に変動している様子がわかります。これはチリ地震により発生した津波によるものです。津波の影響と見られる地下水位の変動は2006年11月に発生した千島列島東方の地震(M7.9)の後に真鶴で観測されています。今回の津波による変動の高さは、真鶴半島の突端部に掘削された真鶴観測井で0.1〜0.2mで、これは、実際に観測された潮位の変化と同程度でした。一方、海岸から数km離れた場所に掘削された小田原観測井でも数mm程度の変動が観測されており、足柄平野の地下水と海水との関係を考える上で興味深い結果です。しかも、最初の変動から、まる一日経過した後も水位の変動が続いていたと見られます。一方、海岸から数km離れた場所に掘削された小田原観測井でも数mm程度の変動が観測されており、足柄平野の地下水と海水との関係を考える上で興味深い結果です。