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更新日:2020年05月15日 作成者:ウェブ管理者 閲覧数:2,581

I−4−(3). 泉質のいろいろ

(1)泉質のいろいろ

前項の「泉質の判定」において、泉質の決め方について説明しました。温泉の泉質は、都道府県の登録分析機関によって成分分析を行い、温泉に含まれている各成分と含有量などによって決められます。すべての温泉はこの化学的な分析データをもとに泉質が決められます。以前は、重曹泉、石膏泉、芒硝泉などの旧泉質名が使われていましたが、昭和54年以降、温泉水に含まれる化学成分をそのまま記す、新泉質名に変わりました。現在は、温泉水に含まれている成分と含有量などによって、幾つかのグループに分けた掲示用の新泉質名が多く使われています。
下の表に、各泉質の特徴と日本全国の代表的な温泉地を記載しました。

泉質のいろいろ

泉質 特徴 全国の代表的温泉地
単純温泉 泉温が25℃以上で、温泉水1kg中に含有成分が1000mgに満たないものです。pH8.5以上のものをアルカリ性単純温泉と呼んでいます。 肌触りが柔らかく、癖のない温泉で、多くの温泉地にみられる泉質です。 岐阜県・下呂温泉、長野県・鹿教湯温泉など
二酸化炭素泉 温泉水1kg中に遊離炭酸1000mg以上を含むものです。入湯すると全身に炭酸の泡が付着します。飲用すると炭酸の爽やかな喉ごしが楽しめます。 大分県の長湯温泉、泉温の低いものは山形県・肘折温泉郷の黄金温泉など
炭酸水素塩泉 温泉水1kg中に含有成分が1000mg以上あり、陰イオンの主成分が炭酸水素イオンのものです。陽イオンの主成分により、ナトリウム−炭酸水素塩泉やカルシウム−炭酸水素塩泉、マグネシウム−炭酸水素塩泉などに分類されます。 ナトリウム−炭酸水素塩泉(重曹泉)は、和歌山県・川湯温泉、長野県・小谷温泉など
塩化物泉 温泉水1kg中に含有成分が1000mg以上あり、陰イオンの主成分が塩素イオンのものです。日本には多く見られる泉質で、陽イオンの主成分により、ナトリウム−塩化物泉、カルシウム−塩化物泉、マグネシウム−塩化物泉などに分類されます。塩分が主成分となっているので、飲用すると塩辛く、塩分濃度が濃い場合は苦く感じられます。 ナトリウム−塩化物泉(食塩泉)は、静岡県・熱海温泉、石川県・片山津温泉など
硫酸塩泉 温泉水1kg中に含有成分が1000mg以上あり、陰イオンの主成分が硫酸イオンのものです。陽イオンの主成分により、ナトリウム−硫酸塩泉、カルシウム−硫酸塩泉、マグネシウム−硫酸塩泉などに分類されます。 カルシウム−硫酸塩泉(石膏泉)は、群馬県・法師温泉、静岡県・天城湯ヶ島温泉など
含鉄泉 温泉水1kg中に総鉄イオン(鉄IIまたは鉄III)を20mg以上含有するものです。 陰イオンによって炭酸水素塩型と硫酸塩型に分類されます。温泉が湧出して空気に触れると、次第に鉄の酸化が進み赤褐色になる特徴があります。また、鉄の含有量が10mgに達していない場合などは、炭酸水素塩泉や硫酸塩泉等に分類されますが、鉄の酸化によって温泉水の色は含鉄泉と同様に赤褐色や茶褐色になります。 含鉄泉は、兵庫県・有馬温泉などでみることができます。
含アルミニウム泉 温泉水1kg中に含有成分が1000mg以上あり、陰イオンとして硫酸イオン、陽イオンとしてアルミニウムを主成分とするものです。 硫酸−アルミニウム泉(明礬泉)は、群馬県・万座温泉など
硫黄泉 温泉水1kg中に総硫黄2mg以上含有するものです。単純硫黄型と硫化水素型に大別され、わが国では比較的多い泉質です。タマゴの腐敗臭に似た特有の臭いは、硫化水素によるものです。 栃木県・日光湯元温泉、箱根温泉の小涌谷温泉など
酸性泉 温泉水の中に多量の水素イオンを含有しているものです。多くの場合は、遊離の硫酸や塩酸の形で含まれ、強い酸性を示します。ヨーロッパ諸国では殆ど見られない泉質ですが、わが国では各地でみることができます。 強酸性泉として、秋田県・玉川温泉、群馬県・草津温泉など
放射能泉 温泉水1kg中にラドンを30(百億分の1キュリー単位)以上含有しているものです。放射能というと人体に悪影響を及ぼすと考えがちですが、ごく微量の放射能は、むしろ人体に良い影響を与えることが実証されています。 鳥取県・三朝温泉、山梨県・増富温泉など

日本温泉協会「温泉百科」より引用

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