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更新日:2026年03月24日 作成者:ウェブ管理者 閲覧数:7

大涌谷の周辺のごく浅い場所で発生する微小な地震 (栗原ほか, 2026)

本トピックでは、Earth, Planets and Space誌に掲載された、大涌谷の周辺のごく浅い場所で発生する微小な地震に関する研究論文について紹介します。

紹介論文:
Kurihara, R., Nagaoka, Y., Honda, R. et al. Shallow volcanic earthquakes in the Owakudani geothermal area, Hakone volcano, Japan. Earth, Planets and Space 78, 17 (2026). https://doi.org/10.1186/s40623-025-02341-3
 

この論文は、箱根火山の大涌谷周辺で発生する微小な地震に注目しました。箱根火山では火山性構造地震と呼ばれる、P波とS波がはっきりとしていて、いわゆる「普通の地震」と同じ地震がよく発生しています。深さ2から5km付近を中心にこのような地震が多く発生しています。今回注目した地震は、これより浅く地表から深さ0から1km程度のごく浅い場所で発生している地震です。この地震は、P波とS波がはっきりしない波形の特徴があります。図1の右に示したように連続して発生しているようなケースもあります。一方、他の火山で見られるような低周波地震とは異なり、「普通の地震」と同様に10–30 Hzの周波数(1秒間に10回から30回振動する波)に強いシグナルが出ています。この論文では、この特殊な浅い微小な地震の活動と分布について調べました。
              この地震の活動はマッチドフィルタ法という、似た波形の地震波を探す方法を用いて調べました。その結果、2014年から2023年の10年間に11,016個という膨大な数の微小な地震の検出ができました(図2左)。過去の活動を調べると、2015年の噴火前後の期間や2019年の火山活発化の前後で増加していました。しかし、それ以外にも2020年から2022年のそれほど箱根火山が活発でない時期にも増えていたことがわかりました。
              この地震の分布は、前述のとおりP波やS波がはっきりしないため、その着時からの震源決定が困難でした。そこで振幅の大きさを使って震源を推定するASL法という手法を用いて震源の決定をしました。その結果、大涌谷周辺の非常に浅い場所(0–1km)に震源が決まりました(図2右)。2015年に発生した地震のみ、それ以降の地震と比べてやや北東に決まる傾向があります。この位置は、2015年の噴火で生じた開口割れ目(Honda et al., 2018)と近接しています。方向も割れ目の向きと似ていますが、これは震源推定手法と地震観測点の分布の制約によって計算上この向きになりやすい傾向があるため、この地震分布の向きに関しては今後精度の高い検証が必要です。
              この地震は活動状況、場所から大涌谷周辺でのガスや熱水といった流体の移動による地震ではないかと推測しています。ただ、未解明の部分も多いため、温泉地学研究所では準リアルタイムでこの浅い地震のモニタリングを継続しています。また、今後、大涌谷周辺での臨時観測等により浅い地震の実態解明にも取り組む計画です。
 

図1. (左) 火山性構造地震の波形 (右) 本研究の対象の浅い地震の波形
 

図2. (左) 本研究の対象である浅い地震と、火山性構造地震、地殻変動それぞれの2014年から2023年までの活動推移。(右) ASL法で決定した浅い地震の震源位置。色は発生時期ごとに分かれている。
 

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